今回のホットライン開催の意義
(1)厚労省:石綿労災認定事業場公表の時期に合わせた全国一斉ホットライン(無料)
私たちは、毎年、厚労省の労災認定事業場情報公表の時期に合わせ、いまだに増え続けているアスベスト被害者の救済とアスベスト問題を世の中によく知ってもらうために、ホットラインを行ってきました。
昨年は、報道の皆様のご協力により、全国で200件以上(二日間)にものぼる相談があり、多くの労災認定(厚労省)、救済認定(労災以外。環境再生保全機構)も実現しました。改めて、アスベスト被害の広がりを実感するとともに、まだまだ、情報が患者と家族に届いていない現実を思い知らされました。実際に、関係機関の認定数などを検証すれば、中皮腫では55%、石綿肺がん(国際的なコンセンサスが得られている中皮腫の2倍発生と推計)では10%の被害者しか公的制度の網に捕捉されていないことがわかります(全国労働安全衛生センター連絡会議調べ。参考資料として添付)。
労災認定事業場公表は、同一事業場や類似事業場に働いていた被害者、遺族に、労災申請など補償、救済の大きなきっかけとなります。また、事業場の周辺に居住、通勤、通学していた人、労働者の家族に、自分や家族の病気がアスベストが原因ではないか知る大事な契機となります。
日常的に私たちに寄せられる対応の中には、「監督署で労災は難しいと言われた」、「救済給付を受給しているが労災の話は何もされなかった」というものが少なからずあり、そのような相談を労災認定に結びつける事案を積み重ねてきています。「被害者の立場に立ったホットライン」へのご協力をどうかよろしくお願いいたします。
(2)「患者・家族」の団体による日本で唯一の電話相談
当会は日本で唯一の全国ネットワークを有する患者・家族の団体です。会員数は700名を越え、全国に17の支部を置き、今後も会員数の増加に伴って新たな支部が設立される予定です。全国的に相談で確認された問題などを共有できるため、関係省庁などへの普遍的な要請などに迅速につなげられます。一例を言えば、中皮腫患者は労災で支給される医療機関への交通費の支給が一定範囲に制限されるものでした、しかし、本会の要望を通じて現在では国内であれば制限なく、患者は治療実施医療機関を選択し、交通費が支給されることとなっています。
また、私たちは相談対応の経験上、公的制度への救済支援に加え、「治療の選択」や「同じ境遇にある方との交流」を求められる方が多くいることを知っています。当会は患者・家族だけでなく、医師や看護師をはじめとした医療関係者との連携を図っております。また、昨年は会の設立10年でしたが、当初からの会員も多くおられ、これまでにさまざまな患者・家族の皆様と交流をする中で養ってきたピア・サポートの要素も会の運営には含まれています。
当事者団体として、このような取り組をしている団体は他にありません。
(3)企業別訴訟や国賠訴訟で新たな成果
2014年10月に泉南国賠訴訟において最高裁が国の責任を認定する判決を出しました。その判決を基準に厚生労働省は全国の石綿製造業の元労働者を対象とした和解基準を発表しました。それを受けて大阪や埼玉での国賠提訴がされています。本会の把握するところでは、泉南訴訟における追加提訴を除き、10件程度の提訴にとどまっています。これまでに発表された事業場ごとの認定事例から対象者数は1000名程度になると思われますので、なお一層の周知と支援が求められています。
(4)あきらめないで相談を! 埋もれる被害の掘り起こしを!
アスベスト疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚)の労災認定(労働者対象、厚労省)や救済認定(非労働者対象、環境再生保全機構・環境省)の認定件数は、明らかに、頭打ちとなっています。
アスベストに特有な悪性のがんである「中皮腫」による死亡者数は、毎年、徐々に増えているにもかかわらずです。
これは、補償、救済制度に問題があることを示しています。
第一に、肺がんの認定が少なすぎることです。そのことは、中皮腫の約2倍あるといわれる石綿肺がんの認定件数が、中皮腫程度しかないことに端的に表れています。認定基準が、石綿ばく露歴よりも、肺の中に残った石綿小体数などの医学所見に偏重した基準になっていることも大きな原因です。医学的所見を得るために必要な検査や病理解剖しなかったために認定が受けられないといった、被害者にとっては不当な悲劇が続いています。医療現場で、安易に、喫煙のせいされたり、石綿による医学所見(胸膜プラークなど)が見過ごされるケースがあとを絶ちません。
第2に、石綿によるじん肺=石綿肺が、間質性肺炎など別の病名で片付けられているケースがあり、なかなか、労災申請に至らないケースがあります。
第3に、アスベスト特有の中皮腫が、労災認定よりはるかに低額の救済認定ですまされているケースが多いことです。救済認定では、遺族給付がなかったり、療養手当は非常に少額であるなど、経済的には労災認定よりはるかに不利です。ただ、中皮腫であればすぐに認定されるため、ばく露原因の調査が難しい場合など、労災認定までいきつかないケースが多いのです。実際、中皮腫の8割以上は職業ばく露によるとされているのですが、救済認定と労災認定の件数が、ほぼ同数になっているのです。
とにかく、アスベスト被害にかかわる疑問や質問がある方の相談をお待ちしています。
対象は、被害原因を問いません。労働現場、公害、家族ばく露などすべての石綿被害が対象です。
(相談例)
「病院や役所で相談しても、よくわからない」
「石綿を扱ったのがあまりに昔のことなので、なにをどう調べていいのか途方にくれている」
「労災申請したけれども、十分な調査がされず不支給処分を受けてしまった」
「建設業で働いていて肺がんになったため申請をしようとしたが、医者に石綿とは関係ないと言われた」
「同じ病気で治療している人の話をきいてみたい」
「夫が中皮腫の苦しさから自殺を図ってしまった。どうしたらいいかわからない。」
「被害の原因をつくった企業を訴えることはできないか」
「仕事でなったのに、労災が適用できないと言われている」
「環境再生保全機構によって、石綿健康被害救済法でとりあえず認定されたが、原因をもっと明確にしたいし、できるなら労災補償を受けたい」
などなど・・・・
☆「過去すべての認定事業場の公表情報が検索できる」ようにしました。
昨年から、過去の厚労省による認定事業場情報を容易に検索出来るサイトを設置しました。
事業場名、作業内容、所在地などで検索できます。
http://joshrc.info/
認定事業場の公表は今回でついに12回目となり、これまでの公表事業場の累積数は、1万件以上に達しています。※稿末<メモ>参照
したがって、毎年、新聞などには、前年度認定のあった事業場のみのリストが掲載されるのがやっとです。厚労省のHP上に過去のデータはありますが、まったく親切ではありません。そこで、上記のサイトから、容易に検索できるようにしました。スマホなどからも利用できます。ぜひ、このサイトを合わせて、ご紹介ください。
<メモ>
これまでの石綿労災事業場公表の経緯
1)2005年7月29日
2)2005年8月26日
※被害者団体、マスコミから公表中断について厳しい批判の声
3)2008年3月28日<公表再開>
4)2008年6月12日
5)2008年10月31日
6)2009年12月3日
7)2010年11月24日
8)2011年11月29日
9)2012年11月28日
10)2013年12月10日 1,049 事業場 (うち新規公表811事業場)
*平成17年7月の第1回公表以来、今回の平成24年度分で、延べ8,604事業場を公表。
11)2014年12月17日
*平成17年7月の第1回公表以来、今回の平成25年度分で、延べ9,561事業場を公表。
12)2015年<今回>
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