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2019/11/01

パワーハラスメント防止の指針素案に対する抗議声明

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20191029


パワーハラスメント防止の指針素案に対する抗議声明


東京都江東区亀戸7-10-1Zビル5

全国労働安全衛生センター連絡会議

議長 平野 敏夫


私たち全国労働安全衛生センター連絡会議は、職場のパワーハラスメント(パワハラ)の問題について、労働者の立場に立ち長年にわたり相談や支援にあたってきた団体や個人の全国ネットワークです。今年9月にも、全国一斉の「職場のいじめパワハラほっとライン」を実施し、職場の様々なハラスメント問題の相談にあたっています(添付資料参照:抗議声明・添付資料_職場のいじめ・パワハラほっとライン2019報告.pdf)。

1021日、厚生労働省労働政策審議会雇用環境・均等分科会において厚生労働省事務局より示された指針案(労政審資料1-1)は、労働現場におけるパワハラ防止対策を著しく後退させ、パワハラ被害に苦しむ多くの労働者を切り捨てる要素が数多く含まれており、到底看過できるものではありません。

私たちは、今回の指針素案に対して強く抗議し、指針素案の即時撤回と抜本的再検討を求めます。以下、私たちが特に問題であると考え、削除を強く求める点について述べます。


1、この指針素案は、労働安全衛生に関わる既存の指針の原則から大きく逸脱している。

この指針素案では、パワーハラスメントの定義を、裁判例を参考にして企業が民事損害賠償義務を負う場合に限定しようとしています。そのことは、「パワハラに該当すると考えられる例/該当しないと考えられる例」の内容などの記述に現れています。しかし、これは根本的に間違っています。

そもそも、今回の指針は、民法上の不法行為とされないレベルのパワハラも対象として、その防止を図るものです(このことは、労政審分科会でも確認されています)。裁判例に基づいて検討された事例をそのまま指針に盛り込むことは、この指針の目的と合致せず、指針の対象となるパワハラの範囲を不当に狭めるものです。

また、労働安全衛生の分野においてはこれまで、労働者の健康と安全を守るために様々な指針が作られてきましたが、指針の対象を「企業が民事損害賠償義務を負う場合」に限定した指針などあり得ないことです。

例えば、職場での腰痛事案は、その発生数が非常に多い一方で、仕事との因果関係が必ずしもはっきりしない事案も多く、ましてや民事損害賠償が命じられた判例は近年ほとんどありません。しかし、2013年に厚労省が改訂した『職場における腰痛予防対策指針及び解説』では、腰痛の原因は多元的であると指摘しつつ、職場における腰痛発症要因を包括的に分析し、広範囲にわたる予防対策を企業に示しています。当然のことながら、この指針では、企業が予防対策を取るべき腰痛について「企業が民事損害賠償義務を負う場合」に限定していませんし、「職場における腰痛に該当しない事例」など一切書かれていません。

労働安全衛生に関する指針は、その対象とする問題を広範かつ包括的に規定しなければ、労働者の安全と健康を守るための予防指針としてまったく実効性を保てません。「企業が民事損害賠償義務を負う場合」に限定されてはならないのです。

今回の指針素案は、他の労働安全衛生分野の指針の原則から大きく逸脱し、企業に防止対策を求めるパワハラの対象を不当に限定するものであり、職場におけるパワハラ防止対策の大幅な後退をもたらしかねません。指針全体について、抜本的な再検討が必要です。


参考: 職場における腰痛予防対策指針及び解説(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/youtsuushishin.html


2、「パワハラに該当すると考えられる例/該当しないと考えられる例」は、現場の実態を無視しています。削除すべきです。

指針素案に書かれている「パワハラに該当すると考えられる例/該当しないと考えられる例」は、上記で述べたように、企業が民事損害賠償義務を負う場合に限定しようとしており、極めて不当です。と同時に、その多くが抽象的な定義のため、労働現場で拡大解釈され、パワハラの正当化に使われる恐れがあります。さらに、「該当しないと考えられる例」の中には、これまでパワハラとして問題になってきた事例すら含まれています。

以下、問題のある事例をいくつか列挙します。なお、これらは、問題の一部の指摘に過ぎず、今回挙げられている事例全体で極めて不適切な記述が多数みられます。指針素案に書かれている事例すべて抜本的な再検討が必要であり、少なくとも「該当しないと考えられる例」はすべて削除すべきです。


・「該当すると考えられる例」について

1.「身体的な攻撃」の事例として、「怪我をしかねない物を投げつけること」とあります。しかし、「怪我をしかねない物」でなければ、物を投げつけてもパワハラに該当しないのでしょうか。

2.「精神的な攻撃」の事例として、「相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること」とあります。しかし、相手の能力を否定し罵倒するようなメールを「複数の労働者宛て」でなければ、当該相手に送ってもパワハラに該当しないのでしょうか。


・「該当しないと考えられる例」について

1.「身体的な攻撃」に該当しない事案として、「誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等により怪我をさせること」とあります。

しかし、何を根拠に「誤って」と判断するのでしょうか。パワハラの加害側が「故意ではない」と主張してパワハラを否定するという事案は、現場でしばしばみられることです。このような抽象的な例示では、そうした加害側の言い訳を正当化することになります。

2.「人間関係からの切り離し」に該当しない事案として、「新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施すること」「処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせること」とあります。

しかし、現場の実態に照らすと、新人研修や処分に伴う研修、「個室」のような閉鎖的空間での研修などは、すべてパワハラの温床になってきました。このような漠然とした範囲で「該当しない」と書くのは、パワハラの防止どころかパワハラの正当化・助長に他なりません。

3.「過小な要求」に該当しない事案として、「経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること」とあります。

しかし、これは、「追い出し部屋」や「業務外し」など、これまでパワハラで使われてきた手法の正当化に使われかねません。実際のケースで使用者側はしばしば、「経営上の理由」を挙げてパワハラを正当化してきました。このような例示を入れることは、企業側の組織的なパワハラを助長することになります。

4.「個の侵害」に該当しない事案として、「労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと」とあります。しかし、「労働者への配慮」の内容が不明確です。これでは、「個の侵害」の正当化に使われる危険があります。

同様に、「労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと」という事例も、労働者の同意をどのように取るのかについて言及がなく、「必要な範囲」についても、その内容が不明です。これでは、「個の侵害」の正当化に使われる危険があります。

3、「パワハラと感じる労働者の意識が悪い」という、パワハラを助長させる記述は削除すべき。

まず、指針素案の4および5の箇所で、厚労省が2016年に改訂した「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第二版)」について一言も言及していません。厚労省がこれまで進めてきたパワハラ防止対策の包括的なマニュアルであり、指針素案の中で一言も紹介していないのは不自然です。

また、雇用管理上講ずべき指針と銘打ちながら、望ましい取り組み(指針素案の5)の部分はあまりにも杜撰です。先に挙げた『職場における腰痛予防対策指針及び解説』などの既存の労働安全衛生の指針に沿って考えるならば、指針素案のP12にある「5 ロ適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組」で触れられている業務量や目標設定の問題について、より詳しく分析して労働現場の好事例を紹介するなど、記載を充実化すべきです。

さらに、特に問題なのは、指針素案のP11で、パワーハラスメントの原因や背景として筆頭に労働者のコミュニケーション能力の問題に言及しつつ、「なお、取組を行うに当たっては、(中略)業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当せず、労働者が、こうした適正な業務指示や指導を踏まえて真摯に業務を遂行する意識を持つことも重要であることに留意する」と書いていることです。

もしコミュニケーション能力不足がパワハラの原因の一つであるとしても、労働者の業務遂行意識とコミュニケーション能力不足に、いったい何の関係があるのでしょうか。業務指示や指導を適切に行わないのは、むしろ経営者や管理職のマネジメント能力の問題です。適正な業務指示や指導を理解しない労働者の意識が悪いと言わんばかりの、この文章自体が、すでにパワハラそのものです。

指針素案P11のこの記載は、労働者がパワハラを相談することを委縮させるものであり、「パワハラを訴える労働者は、真摯に業務を遂行する意思が欠けている」と事業主をミスリードさせるものです。この文言は削除すべきです。


参考: パワーハラスメント対策導入マニュアル(第2版、厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000128935.html


11:32 | コメント(0)
2019/10/30

連帯労組に対する大規模刑事弾圧を弾劾する声明/第30回総会

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2019年9月28日、29日、大阪で開催された全国労働安全衛生センター連絡会議(略称:全国安全センター)第30回総会において、この間の連帯労組関西生コン支部に対する極めて不当な弾圧について、これを弾劾する声明が採択された。

連帯労組に対する大規模刑事弾圧を弾劾する声明

1 現在、全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下「連帯労組」という)に対する大規模な刑事弾圧が加えられている。昨年8月から今年9月までの間に、滋賀県警、大阪府警、京都府警、和歌山県警は、連帯労組の組合員が行った正当な労働組合活動に関連してのべ79名の組合員を逮捕した。そのうち66名が起訴され、今なお執行委員長を含む5名が身体拘束を受けている。

2 容疑の一つとされているのが、連帯労組の組合員が行った工事現場におけるコンプライアンス(法令順守)活動である。組合員が現場監督者に対して労働安全衛生法や道路法などの法令に違反した事実を指摘し、行政機関に申告するなどして違法行為の改善を求めたことが威力業務妨害罪にあたるとして立件されている。
そもそも工事現場において法令違反行為が行われていること自体許されず、組合員の活動は正当である。現場監督者が組合員や行政機関と対応して違法状態を解消することは、現場監督者の本来的業務であることからすれば、組合員の活動が「業務妨害」にあたるということはできない。

3 労働現場における労働者の安全衛生活動は、重大事故の背景にある軽微な不安全行為の芽を摘み、大きな労働災害を防止するうえできわめて重要な活動である。
連帯労組は建設業界におけるコンプライアンス活動を精力的に行っている。この活動は、労働者の安全確保だけでなく、生コンの安売りを規制して中小企業の経営の安定を図り、労働者の雇用や労働条件を維持・改善することに向けられたものである。それと同時に、建築物の品質確保や地域環境の保全など消費者や地域住民の利益にかなう活動でもある。
今回の大規模弾圧は、このような連帯労組の正当な組合活動を阻害するだけでなく、労働組合や市民団体による安全衛生活動を委縮させるものである。

4 わたしたちは、連帯労組に対する大規模刑事弾圧を弾劾し、公平かつ適正な裁判手続により冤罪が晴らされることを求めるとともに、今なお不当に拘束されている組合員の一日も早い釈放を求めるものである。

2019年9月29日

全国労働安全衛生センター連絡会議第30回総会 参加者一同


13:49 | コメント(0)
2016/03/23

2015年度厚生労働省交渉

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全国労働安全衛生センター連絡会議では毎年、厚生労働省と労災・職業病問題をめぐる諸問題について交渉の場を設けています。
今年度は以下のとおり実施致します。参加・取材をご希望の方は担当までご一報ください。

日時:2016年3月30日(水) 13時〜17時
※12時30分より玄関ロビーにて通行証を配布します。

場所:衆議院第1議員会館 地下1階第6会議室

2015年度厚労省要望書.pdf
※当日は本要請書に基づいて意見交換をします。

問い合わせ
担当 澤田(090-6668-916)
11:23 | コメント(0)
2015/12/11

全国一斉アスベストホットラインを実施します!

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当事者団体による

全国一斉アスベスト被害ホットライン

<2015>の実施について

 

しない・させない、泣き寝入り・被害隠し 

石綿救済法施行(20063)からまもなく10年ですが

中皮腫は55%、石綿肺がんは10%の人しか救済されず

適正な補償・救済を受けるべき方が受けられていません!

 

20151217日(木)、18日(金) 9時~17時

(全国共通フリーダイヤル)

0120-117-554


 



13:53 | コメント(0)
2015/12/11

<12・18> 被ばく労働に関する関係省庁交渉

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被ばく労働に関する関係省庁交渉を以下のとおり実施します。

2015年12月18日(金) 13時30分〜16時30分             
 (13時10分から玄関ロビーにて通行証を配布)


場所:衆議院第一議員会館 第6会議室

参加省庁:原子力規制庁、経済産業省等
要請者:原子力資料室、ヒバク反対キャンペーン、全国労働安全衛生センターほか

※どなた様でも参加・撮影・録音頂けます。
※要請書やこれまでの交渉の記録はこちらからご覧ください。
13:48 | コメント(0)
2015/06/30

<7・7>被ばく労働関係省庁交渉のご案内

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被ばく労働に関する関係省庁交渉を以下のとおり実施します。

2015年7月7日(火) 13時−16時 衆議院第一議員会館第6会議室
              (12時40分から玄関ロビーにて通行証を配布)

参加省庁:原子力規制庁、経済産業省等
要請者:原子力資料室、ヒバク反対キャンペーン、全国労働安全衛生センターほか

※どなた様でも参加・撮影・録音頂けます。
※要請書やこれまでの交渉の記録はこちらからご覧ください。
09:04 | コメント(0)
2015/06/22

<6・28、29>クボタショックから10年の集会が開催されます!

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アスベスト問題が社会に大きな波紋を呼び起こす契機となりました、兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場周辺の被害発覚が報道されてから、間もなく10年を迎えます。

当団体としても、当時から被害者のサポートに全面的に協力をしてきました。
あれから10年で何が変わり、何が変わっていないのかを確認する集会になります。多くの皆様のご参加をお待ちしております。

日 時: 6月27日(土)正午~ 4時半
6月28日(日) 9時45分~正午
場 所: 尼崎市中小企業センター 阪神尼崎駅北東すぐ    電話 06-6488-9501

詳しくはこちらをご覧ください
15:57 | コメント(0)
2015/02/05

<2・19>被ばく労働関係省庁交渉のご案内

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被ばく労働に関する関係省庁交渉を以下のとおり実施します。どなたでもご参加頂けます。

日時:2015年2月19日(木) 13時30~16時00分 
※13時10分から会館ロビーにて通行証を配布します。

場所:衆議院第一議員会館第6会議室

参加団体:原子力資料情報室、ヒバク反対キャンペーン、原水爆禁止日本国民会議、特定非営利法人アジア太平洋資料センター(PARC)、福島原発事故緊急会議被爆労働問題プロジェクト、全国労働安全衛生センター連絡会議

参加省庁:厚労省、経産省、原子力規制庁、文科省、総務省、防衛省

参加・撮影:どなたでもご参加・撮影・録音頂けます。

※要請書に沿って、各省庁から回答を頂き意見交換をします。

12:24 | コメント(0)
2014/12/19

阪神淡路大震災から20年 石綿に不安5割超え

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兵庫労働安全衛生センターが参加していた震災アスベスト研究会が、阪神淡路大震災の発生時に被災地に居住していた住民を対象にアスベストの健康不安に関するアンケートを実施し、調査結果の概要を報道関係者に公表しました。

詳細は来年1月に神戸市で開催されるシンポジウムで発表されます。

参考記事
神戸新聞 石綿健康不安 専門家「実態調査し対策を」



「震災とアスベストリスクを考えるシンポジウム」

2015年1月12日 1月12日(月/祝) 13時ー16時 神戸市勤労会館 大ホール(参加無料)

プログラム等詳細は以下をご確認ください。

http://www.hoshc.org/img/notice150112.pdf


10:48 | コメント(0)
2014/12/15

全国一斉アスベスト被害ホットラインを実施します!

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全国一斉アスベスト被害ホットライン
2014
の実施について

しない・させない、泣き寝入り・被害隠し
肺がんは、安易にタバコのせいにされ、
石綿肺は、間質性肺炎と言われ、そのままに。
中皮腫も、石綿ばく露原因不明で労災認定されず。
適正な補償・救済を受けるべき方が受けられていません!

12月18日(木)、19日(金) 9時~17時

(フリーダイヤル) 0120-117-554
     (着信先:中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 本部)
     東京都江東区亀戸7丁目10−1 Z ビル5F
(東日本 北海道含む) 03-5627-6007
     (同:中皮腫・じん肺・アスベストセンター)
     東京都江東区亀戸7丁目10−1 Z ビル5F
(中部) 052-837-7420
     (同:患者と家族の会 東海支部)
     名古屋市昭和区山手通5 丁目33−1
(西日本、四国除く) 06-6943-1527
     (同:患者と家族の会 関西支部)
     大阪市中央区内本町1-2-11 ウタカビル201
(四国) 0897-47-0307
     (同:患者と家族の会 四国支部)
     愛媛県西条市安知生138-5

★相談には、アスベスト・労災問題の専門スタッフがあたります。
★相談内容に応じて、医師、弁護士、環境測定機関なども紹介します。

【主 催】
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 (http://www.chuuhishu-family.net/w/)
中皮腫・じん肺・アスベストセンター/全国労働安全衛生センター連絡会議
(http://www.asbestos-center.jp / http://www.joshrc.org)
〒136-0071 江東区亀戸7-10-1 Zビル5階


ホットラインの開催にあたって

(1)厚労省:石綿労災認定事業場公表の時期に合わせた全国一斉ホットライン(無料)

私たちは、毎年、厚労省の労災認定事業場情報公表の時期に合わせ、いまだに増え続けているアスベスト被害者の救済とアスベスト問題を世の中によく知ってもらうために、ホットラインを行ってきました。
昨年は、報道の皆様のご協力により、全国で293件(二日間)にものぼる相談があり、多くの
労災認定(厚労省)、救済認定(労災以外。環境再生保全機構)も実現しました。改めて、アスベスト被害の広がりを実感するとともに、まだまだ、情報が患者と家族に届いていない現実を思い知らされました。
労災認定事業場公表は、同一事業場や類似事業場に働いていた被害者、遺族に、労災申請など補償、救済の大きなきっかけとなります。また、事業場の周辺に居住、通勤、通学していた人、労働者の家族に、自分や家族の病気がアスベストが原因ではないか知る大事な契機となります。
最近の、大阪市西成区での大阪パッキング製造所周辺被害、大阪府堺市での石綿原料用麻袋再生業関連被害は、典型的な例です。
「被害者の立場に立ったホットライン」へのご協力をどうかよろしくお願いいたします。

(2)<NEW!>「過去すべての認定事業場の公表情報の検索サイト」を開設。
新たに、昨年度の公表分(2014 年度まで認定分)の認定事業場情報を容易に検索出来るサイトを設置しました。
http://koshc.org/?page_id=39
なお、今年度公表分を含めた最新サイトについては、今年度公表後すみやかに、全国労働安全衛生センター連絡会議のHP(http://joshrc.info/)に設置します。
認定事業場の公表は今回でついに11 回目となり、これまでの公表事業場の累積数は、1 万件近くに達しています。
したがって、毎年、新聞などには、前年度認定のあった事業場のみのリストが掲載されるのがやっとです。厚労省のHP 上にも過去のデータはありますが、親切ではありません。
そこで、上記のサイトから、容易に検索できるようにしました。スマホからも利用できます。
ぜひ、ホットラインと合わせて、このサイトもぜひご紹介ください。

≪このデータベースサイトの特徴≫
●今回も含め、過去に公表された1 万件近い事業場のデータ全てを一元管理したデータベースです。
●事業場名はもとより、「事業場の所在地」や「石綿ばく露作業内容」からキーワード検索できます。
●過去に働いていた「事業場名」だけでなく、「作業内容」からも検索できるので、同一事業場からの石綿ばく露の可能性を類推するだけでなく、過去に労災認定等されていない事業場であっても、「作業内容」から石綿ばく露の可能性を類推することができます。
●また「事業所の所在地」を検索対象としたので、石綿製品製造工場等の石綿を取り扱ってきた事業場の周辺住人の石綿粉じんの環境ばく露の可能性を類推することができます。

(3)あきらめないで相談を! 埋もれる被害の掘り起こしを!
アスベスト疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚)の労災認定(労働者対象、厚労省)や救済認定(非労働者対象、環境再生保全機構・環境省)の認定件数は、明らかに頭打ちで、さらにまずいことに、請求件数は減少傾向となっています。
アスベストに特有な悪性のがんである「中皮腫」による死亡者数は、毎年、徐々に増えている(つまり石綿肺がんを含めて、アスベスト被害は増えていると推定できる)にもかかわらずです。
これは、アスベスト被害の救済制度がまだまだ周知されていない、医療現場の理解度も不足しているとともに、補償、救済制度に問題があることを示しています。
第一に、肺がんの認定が少なすぎることです。そのことは、中皮腫の約2倍あるといわれる石綿肺がんの認定件数が、中皮腫程度しかないことに端的に表れています。認定基準が、石綿ばく露歴よりも、肺の中に残った石綿小体数などの医学所見に偏重した基準になっていることも大きな原因です。医学的所見を得るために必要な検査や病理解剖しなかったために認定が受けられないといった、被害者にとっては不当な悲劇が続いています。医療現場で、安易に、喫煙のせいにされたり、石綿による医学所見(胸膜プラークなど)が見過ごされるケースがあとを絶ちません。
第2に、石綿によるじん肺=石綿肺が、間質性肺炎など別の病名で片付けられているケースがあり、なかなか、労災申請に至らないケースがあります。
第3に、アスベスト特有の中皮腫が、労災認定よりはるかに低額の救済認定ですまされているケースが多いことです。救済認定では、遺族給付がなかったり、療養手当は非常に少額であるなど、経済的には労災認定よりはるかに不利です。ただ、中皮腫であればすぐに認定されるため、ばく露原因の調査が難しい場合など、労災認定までいきつかないケースが多いのです。実際、中皮腫の割以上は職業ばく露によるとされているのですが、救済認定と労災認定の件数が、ほぼ同数になっているのです。
とにかく、アスベスト被害にかかわる疑問や質問がある方の相談をお待ちしています。
対象は、被害原因を問いません。労働現場、公害、家族ばく露などすべての石綿被害が対象です。
(相談例)
「病院や役所で相談しても、よくわからない」
「石綿を扱ったのがあまりに昔のことなので、なにをどう調べていいのか途方にくれている」
「労災申請したけれども、十分な調査がされず不支給処分を受けてしまった」
「建設業で働いていて肺がんになったため申請をしようとしたが、医者に石綿とは関係ないと言われた」
「同じ病気で治療している人の話をきいてみたい」
「夫が中皮腫の苦しさから自殺を図ってしまった。どうしたらいいかわからない。」
「被害の原因をつくった企業を訴えることはできないか」
「仕事でなったのに、労災が適用できないと言われている」
「環境再生保全機構によって、石綿健康被害救済法でとりあえず認定されたが、原因をもっと明確にしたいし、できるなら労災補償を受けたい」などなど・・・・

これまでの石綿労災事業場公表の経緯
1)2005 年7 月29 日
2)2005 年8 月26 日
※被害者団体、マスコミから公表中断について厳しい批判の声
3)2008 年3月28 日<公表再開>
4)2008 年6 月12 日
5)2008 年10 月31 日
6)2009 年12 月3 日
7)2010 年11 月24 日
8)2011 年11 月29 日
9)2012 年11 月28 日
10)2013 年12 月10 日 1,049 事業場 (うち新規公表811 事業場)
*平成17 年7 月の第1 回公表以来、今回の平成24 年度分で、延べ8,604 事業場を公表。
11)2014 年<今回>
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